「○○歳になったらマックでバイトしろ」という本が大ヒットしていましたが、
塾を経営する立場からすると、
「大学生になったら、そして良いところに就職したかったら、塾でバイトしろ!」 と言いたい。
このことは、ご父兄からも言われることが多く、
「塾以外のバイトは禁止!」 という硬派な親御さんもいるくらいです。
もちろん、ある一定の要件を満たさなければ、塾でバイトなんかできないのですが、
もし必要条件を満たしているなら、絶対に塾でバイトをすべきです。
これには、ちゃんとした理由があります。
こ の 記 事 の 目 次
塾でバイトをする条件
塾でバイトをするには、当然ある一定の学力が必要です。
小学生や中学生を教えるなら、偏差値50以上、たとえば日大や駒澤大学で十分です。
高校生を教えるなら、偏差値60以上、よく言われるMARCH(明治、青山、立教、中央、法政)以上の学力が必要です。
そして、大学受験をしっかりと教えるなら、早慶・国立上位の学力が必要になります。
もちろんこれらは絶対条件ではないですが、学力の足りない人が指導をすると、準備が著しく大変なことに加えて、指導の時にもアセアセになってしまって苦労します。
明光義塾やトライ、東京個別指導学院のような個別指導型の塾では、日大レベルの先生が多い印象ですが、講義スタイルを取っている塾や予備校では、最低MARCH以上ではないかと思います。
なぜ塾でバイトするといいのか① / シフト性ではない
一般企業から見て、ファーストフード店でのバイトは、「手軽なバイト」に映ります。
最大の理由は、シフト制で、好きな曜日に、好きな時間に入れること、欠勤も比較的自由で、月ごとにシフトを変えられるからです。
これは、企業の社員にはない制度です。
これに慣れている人は、企業から見てほしい人材でしょうか?
答えはNOです。
一方、塾の仕事はどうでしょうか?
フランチャイジーではない、しっかりとした塾では、特定の生徒を、決まった曜日、決まった時間、ずっと変わることなく見続けていきます。
大学の試験があろうが、サークルの合宿があろうが、友達との予定があろうが、請け負った生徒は責任をもって指導しなければなりません。
そして、結果に責任を持ち、一生懸命プランニングをしなければなりません。
これはまさに、企業側が社員に求めるものなのです。
なぜ塾でバイトするといいのか② / 準備が必要
さらに、塾の仕事は、何の準備もなく、勤務時間直前に来て、すぐこなせるような単純作業ではありません。
生徒の情報をしっかりと頭に入れたうえで、いつまでに、何を、どのように進めていくのかプランニングをします。
そのうえで、上の人(教室長や社員)に確認をし、それが決まったら授業準備に入ります。
生徒がどの辺りでつまづくか、もっと良い解き方はないか、もっと分かりやすい説明はないか、前回の復習確認をどうするか、考えることは本当につきません。
もちろん基本線は、上の人が指示してくれますが、生徒と向き合う現場では自分がすべて、できるだけの準備をしなければなりません。
ある意味、とても割に合わない仕事です。でも、それを良しとして続けてきた人は、一般の人が到底手に入れられないほどの実力を持つのです。
さて一般企業の仕事はどうでしょう。
金融に進んだ友人は、週末に、必要な専門知識の習得を一生懸命やっていました。
メーカーに行った友人は、海外赴任を前に、夕方語学学校に通っていました。
業界や企業風土などで、若干の違いはあれども、実社会で活躍されている方々は大なり小なり、バックグラウンドで努力をしています。
それができないような人は、そもそもそういう優良企業には入れないと言ったほうがよいかも知れません。
「しっかりとした塾で長期間にわたって責任ある仕事をしてきた」、それはそれだけで自分のブランディングにつながっているのです。
実際に、私の塾で4年間講師を全うした人間は、すべからく優良企業に就職しています。
なぜ塾でバイトするといいのか③ / 報連相が必要
就活生ならだれでも知ってる「報連相」、念のために言うと、「報連相」とは、報告・連絡・相談という、職務上不可欠な一連のコミュニケーションを指しています。
大手企業で活躍している友人からは、「最近の若い奴は、報連相ができなくて困る…!」とよく聞かされます。
企業の採用担当者の立場になってみましょう。
会社の業績を上げるためには有能な人材が必要です。
そして、その業務は、どんなに優秀な社員でも、とても一人でできるような内容ではありません。
ゆえに、必然求める人材は、頭脳明晰でありながら、業務をグループで円滑に遂行できるだけのコミュニケーション能力を有する人になります。
前者は、一流大学の受験を突破してきた人なら、まず外れることはないはずです。
しかし、後者はどうでしょう。
近年インターンシップ制度を採用する企業が増えているのは、このような企業側の苦悩があるからです。
さて、塾の仕事です。
これは、決して一人でできることではありません。
授業でのコミュニケーションを通して生徒と関係を構築するのは当然として、さらに上の人と報連相を通して意思疎通を図ることも必要になってきます。
このどちらか片方が欠けたとしても、塾での仕事は務まりません。
「同じ塾でずっと責任ある仕事をしてきました」、これは企業側から、とても評価の高いポイントなのです。
なぜ塾でバイトするといいのか④ / ルール順守
塾の仕事は、とても規律が厳しい。
まず服装。
基本はネクタイにスーツです。塾に入ってから着替えるのではなく、家から着ていかなければなりません。
就職したら当然のことですが、学生の方々には慣れないことかもしれません。
次に情報管理。
塾には個人情報がいっぱいです。生徒の住所、電場番号、メールアドレス、成績などなど。
私が学生の頃に講師をしていた塾では、個人情報を漏えいした者は、社会的に抹殺するとまで脅されました(笑)
しかし、進研ゼミの例を見てもわかるように、個人情報が漏れたりなんかしたら塾は大損害です。
講師に厳しくするのも当然ですね。
さらに勤怠について。
これは当然かもしれませんが、どんなことがあっても欠勤、遅刻は許されません。
私の塾では、忌引き以外で休みをとるときは、原則1か月以上前に申告しなければなりません。
またもしもの事態にも対応できるように、到着は授業開始の20分前です。
他にもいろんな規則やルールがあります。
これらは学生には厳しいことばかりです。
でも、だからこそ、企業側にしてみれば、塾講師というのは安心できると言えるのです。
なぜ塾でバイトするといいのか⑤ / 責任が重い
これはとても大変なことです。
担当する生徒が受かるかどうかは、その生徒の人生に多大なる影響を与えることになります。
1人の人間の将来を左右する一大事に絡む仕事なんてそうそうありません。
だから、生徒本人から受けるプレッシャーは当然、ご父兄から、そして上の人からも相応の重圧を受けます。
もちろん合格した瞬間に一気に報われるのですが、やってる最中は本当に死にそうになります。
最近、プレッシャーに弱い若者が増えています。
就職したけど、重圧に耐えきれずほんの1~2年で辞めてしまう人もたくさんいます。
でも考えれば当然で、大学生がやるようなバイトの大半には、このような経験がないからです。
塾でずっと仕事をやってきた。これは、そのような意味で、自身の証明書になるのです。
なぜ塾でバイトするといいのか⑥ / 喜びの共有
こんなつらいことばかりの塾での仕事ですが、一つだけ良いことがあります。
それは、「喜びを共有できること」、「感謝されること」 です。
一年ほどの先の合格に向けて、生徒のことを一生懸命考え、励まし、叱り…。
こんな大変な時が、このままずっと続くのかと絶望しそうになるほどです。
しかし、必ず終わりの時はやって来ます。
生徒が合格したとき、生徒と一緒に泣いていた講師もいました。本当にうれしそうでした。
逆に、落ちた生徒を泣きながら一生懸命励ましている講師もいました。本当に辛そうでした。
生徒から感謝の手紙をもらったり、ご父兄がわざわざ講師にお礼にお見えになられたりしたこともあります。
生徒と気持ちを通わせることができない講師には、こんな光景はありませんが、このような思いを持てた講師には、一生モノの経験になるでしょう。
とても得がたい経験です。
これは企業サイドからすると評価にかかわるところではないと思いますが、きっと労働の何たるかを学ぶ良い機会になるでしょう。
こんな塾ではバイトするな① -研修制度-
そんな厳しくもよいことだらけの塾での仕事、ではどんな塾でもいいのか?
そんなことはありません。
私は学生時代、さまざま塾で指導してきましたが、いい塾もあれば、これはどうかという塾もありました。
まず、研修制度がしっかりしていない塾はダメです。
これが実に多い。
地域密着型の小規模塾なんかでは、経験者だというと、翌日いきなり授業ということもありました!(あまりにもひどいので、私が研修プログラムを作ってあげましたが…)
一方、本当に研修がしっかりしていたのは、市進学院でした。
座学研修から始まって、電話応対研修、模擬授業研修、フォローアップ研修、すべて終わるのに1か月以上かかり、達成度の低い講師(候補)には仕事が振られないという徹底ぶりでした。
研修がしっかりしていないところは、業務の進め方も雑であるのは当然です。
こんな塾は自分のキャリアアップに何も役に立たないので、絶対におすすめできません。
こんな塾ではバイトするな② -手軽にいつでも-
次にやめたほうが良いケースは、いつでも入れるシフト型の塾です。
主に個別指導のチェーン店(フランチャイジー)に多いのですが、やはりおすすめできません。
担当する生徒もコロコロ変わるので、責任感もわかなければ、愛着も出てきません。
ただ時間をつぶしてお金をもらっている感覚なので、自分の成長につながることはないですし、生徒から感謝されることもありません。
ただ説明するだけのマシーンです。こんなのは、もはやファーストフードのバイトです。
せっかく塾でバイトをするのであれば、長期間にわたって同じ生徒を見て、その子のために一生懸命プランニングをし、成績上昇や合格を共に喜びあえる経験を持ってもらいたいと思います。
私も明光義塾などで指導したことがありますが、毎回違う生徒で、教室長から指示されたテキストをただ説明し続けるだけ、なんか虚しくなっていました。
こんな塾ではバイトするな③ -社員が1人-
これもダメです。
フランチャイズ型の塾は、ほとんごがこのパターンです。
社員が1人だと、教室運営はきわめてシステマティックで、講師は説明マシーン、社員(教室長)は営業マン。
講師はただ受けた質問に答えられれば十分で、継続的な指導をすることもなく、結果として大して期待もされません。ゆえに、研修やミーティングなんかもほぼゼロです。
最近は、運営本部が一括して研修なんかやってますが、現場から遠い感覚です。
時給も低く、みんな悪い意味でバイト感覚でやってましたし、講師の大学ランクも低く、高校生を教えられると「すごい!」なんて言われます。
結果、自分にとって将来につながる経験ができるわけもなく、おすすめできません。
やっぱり塾講師は良い
塾講師について、良いこと悪いことを書いてきました。
私は、大学に入ってすぐに塾講師として仕事に就き、実社会での修業時代を経て、自分で塾を作って経営もしてきました。
塾での仕事には、企業での仕事のための、ほとんど全てがそろっていると断言できます。
割に合わない?
確かにそうかもしれません。
でも割に合うことしかやらないような人間を、あなたは信頼することができますか?
これから就職を考えられている方には、しっかり考えてほしい。
人から求められる人間になるための社会勉強、あなたはそれをしていますか?
会社から評価をもらえるような経験、あなたはそれをしていますか?